※このサイトはAZAPAエンジニアリング株式会社をスポンサーとしてZenken株式会社が運営しています。

近年のモデルベース開発の動向

目次
MBD推進センター会員 市原純一氏

ページ監修:MBD推進センター会員 市原純一氏

MBD推進センターは経済産業省の主導で進められてきたMBDの普及が主要な活動であり、MBDの利点や実装方法に関する情報を産業界や研究機関に提供し、MBDの普及を推進しています。その会員である市原氏に、当ページの監修を依頼しています。

モデルベース開発が普及した理由とは?

システムを構築する制御や制御対象をモデル化して「動く仕様書」であるモデルをつくってシミュレートし、設計と検証を繰り返すことで実装まで行う開発手法「モデルベース開発(MBD:Model Based Development)」。自動車業界を中心に普及が進んでいますが、何故、自動車業界での普及が進んでいったのでしょうか?

自動車の電子制御システムの複雑化

1990年代、自動車の排ガス規制で、排ガスを出さないような自動車を販売する必要があった自動車メーカーでは、電子制御スロットルやエンジンの燃料噴射制御の開発を始めました。

しかし、電子制御システムの複雑化もあり、それまでのプロトタイプを作って実験をするという開発プロセスでは効率が悪く、仮想環境で実機をモデル化し、コンピューター上でシミュレーションするというモデルベース開発が導入されるようになりました。

モデルベース開発のメリット

コンピューター上で仮想モデル(プラントモデル)と、それを動かす制御モデル(数式)をつくり、仮想環境でシミュレーションした後に最適化し、リアルなものに置き換えるというモデルベース開発は自動車業界に多くのメリットをもたらしています。

モデルベース開発はシミュレーションを行って成果が出たものから実装していく方法なので、開発初期段階で仕様を詰めることができ、試作回数を減らすことができます。

また、開発期間短縮や製造コスト削減だけでなく、モデル化することでデータの再利用性高くなり、開発効率アップ、再現性確保というメリットもあります。

たとえば、自動運転ソフトの開発の場合、実際の車両を使って公道でテスト走行が実用化には不可欠ですが、モデルベース開発なら、膨大な数の仮想車両を仮想道路で走らせることが可能です。

妥当性検証、欠陥や故障の検証、強度や熱などの解析なども、従来のようにハードウェアのプロトタイプを待つことなく、設計段階でシミュレーションすることができます。

最近では、CASE(C:コネクテッド、A:自動運転、S:シェアリング、E:電動化)により、自動車の構造は複雑化し、より効率的な開発が求められるようになり、ますますモデルベース開発のニーズがたかまっています。

AIとともに進化する次世代モデルベース開発

これまでのモデルベース開発のプロセスでは、データとプログラムをもとにして必要とするアウトプットを得るプログラムを設計するというものでした。

しかし、次世代モデルベース開発では、機械学習(AI)データと必要なアウトプットをもとにモデル化し、プログラムを導き出します

自動運転であれば、センサーやカメラの捉えた歩行者や車両をディープラーニングが正しく認識し、その結果をもとにして車両の挙動を制御するプログラムを作ることになります。

また、自動車のさまざまな制御にディープラーニングの一部である強化学習を適用する試みも行われています。

様々な業界で利用される次世代MBD

AIを利用した次世代モデルベース開発は、航空宇宙、医療機器、ロボット、産業用機械のリモートメンテナンスなど、様々な業界での利用が進み、今後、ますます増えていくことが予想されています。

車両のオーバーステア状態を検出するユニット

車両のオーバーステアとは、車両が旋回中にリアタイヤのグリップを失ってしまい遠心力で内側に回り込む状態のことですが、これはタイヤの摩耗、旋回速度超過、滑りやすい路面などが原因で起こります。この自動車メーカーでは、機械学習モデルを開発し、オーバーステアを判定できる電子ユニットを完成させています。

参照元:MathWorks社公式サイト(https://engineer.fabcross.jp/archeive/190511_mathworks2.html

ポンプ機器の予知保全システム

油田では、複数の容積式ポンプ搭載トラックが採掘する油井へ水と砂の混合液を高圧で注入します。米国の油田サービス企業では、モデルベース開発を天然ガスと石油採掘機器の保守ソフトウェア開発に利用。1テラバイトものデータを分析して機械学習アルゴリズムに適用することで、事前に石油採掘機器の故障を予測するニューラルネットワークを開発しました。

参照元:MathWorks社公式サイト(https://engineer.fabcross.jp/archeive/190511_mathworks2.html

旅客機の燃料管理システム

オランダの航空会社の旅客機には、翼内に250トンのジェット燃料を格納する11個の燃料タンクが設けられています。飛行中の重心最適化や翼の反り返り制御は、エンジンへの燃料流量調整やタンク間での燃料移動で行っていますが、この燃料管理システムの制御ロジック設計にはモデル開発が適用されています。

参照元:MathWorks社公式サイト(https://engineer.fabcross.jp/archeive/190511_mathworks2.html

SUPERVISOR
監修者情報
JapanMBD推進センター

sponsored by AZAPAエンジニアリング株式会社

公式サイトキャプチャ
モデルベース開発の
利点や実装方法などを
産業界や研究機関に提供する

「一般社団法人MBD推進センター」とは、モデルベース開発は経済産業省の主導で進められてきた普及への取り組みの延長線上にある団体です。トヨタや日産、マツダなど多くの企業が参加し、MBD開発の共同研究がおこなわれています。

監修
MBD推進センター会員
市原 純一氏

自動車技術会のモデル流通検討委員の幹事を行いながら、制御開発、モデル開発を行う。MBD推進センターのガイドラインや、準拠モデルの開発にも携わる。

【所属・役職など】
・AZAPA株式会社 取締役
・ MBD推進センター 会員
・モデルベース大学 講師

【専門家監修】
モデルベース開発エンジニア
になる道筋を解説

関連ページ