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モデルベースの開発プロセス

コンピューター上の「モデル」を使い、シミュレーションを駆使して開発を行うのがモデルベース開発です。試作を繰り返すよりも開発期間を短縮でき、品質も向上できるというメリットがあります。ここでは、そのモデルベース開発のプロセスを解説します。

モデルベースの開発プロセス

モデルベースの開発プロセスは、システムの目的や必要な機能を明確にする「要件定義」、システム全体の構造を設計する「基本設計」、具体的なプログラムの仕様を決定する「詳細設計」、コーディング(実装)、個々のプログラムが正しく動作するかどうかを確認する「単体評価」、複数のプログラムが正しく連携するかどうかを確認する「結合評価」、システム全体の動作を確認する「実機評価」という流れで進行します。

前半の要件定義、基本設計、詳細設計は設計のステップであり、後半の単体評価、結合評価、実機評価は確認のステップです。

要件定義が正しく反映されていることをテストするのが実機評価で、基本設計のテストは結合評価、詳細設計のテストは単体評価で行うという関係になっています。このように、工程が明確に分かれていることで、各テストでチェックする内容が明確になり、システムの品質を高めることが可能です。

要件定義

開発対象のシステムがどのようなものなのか、どのような機能や性能を持たせるのかを定義するのが要件定義です。クライアントにヒアリングを行い、必要な機能と必要ではない機能を整理して定義します。この工程を丁寧に行うことで、クライアントが必要とする機能を確実に搭載し、要求以上の要件を盛り込んでしまい予算を超えるといった事態を防ぐことができます。

基本設計

基本設計では、要件定義で決定した各要件をどのように実現するか、具体的に設計します。これはシステムの基本的な構造や機能を設計するステップです。各ECUの受け持つ機能や入出力、通信仕様などを定義して機能を分割した後に、ガワだけの制御モデル(スケルトンモデル)を作成します。この段階で、各コンポーネントやモジュールの役割、およびそれらの相互連携が明確になり、システムの全体像が設計されます。これにより、システムの基本的な動作が理解でき、後の詳細設計や実装に向けた基盤が整います。

詳細設計

詳細設計は、基本設計を基にシステムの具体的な構造と動作を定める工程です。このステップでは、開発チームがソースコードを書くための詳細な指針を提供します。具体的には、プログラムの構造やインターフェース、データ構造を詳細に記載し、異なる開発者でも同様の結果を生み出せるようにします。

また、非機能要求に関しても、システムアーキテクチャやパフォーマンス基準、セキュリティプロトコルなどを具体化します。これにより、システムの全体像が明確になり、実装段階での効率的な開発が可能となります。

コーディング(実装)

詳細設計で定義された仕様に基づき、実際のプログラムを作成するステップです。この工程では、モデルを基にしてコードを生成し、シミュレーションやテストを通じて動作を確認します。モデルベース開発の利点として、再利用性の高いモデルを活用することで、開発効率を向上させることができます。従来は人力でコーディング作業を行っていましたが、モデルベース開発では自動コード生成機能の利用が可能です。そのため、開発期間の短縮とソフトウェア品質の向上が実現できます。

単体評価

自動生成したコードを実際のECUに書き込み、机上環境で動作検証を行うのが単体評価です。各ECUがそれぞれ正しく動いていることが確認できないまま結合してしまうと、不具合が出た時の原因特定に時間がかかってしまうため、ここで個々のECUに問題がないことを確認しておきます。他のECUと連携して機能を実現する場合でも、まずは個々のECUが仕様通りに動作することを確認することがポイントです。

結合評価

結合評価は、複数のECUを結合して机上環境で動作検証を行うステップです。単体評価で個々のECUの確認が完了しているため、この工程では搭載予定の全てのECUを接続し、評価を実施します。主な目的は、ECU間の通信内容や、複数のECUが連動して機能する制御内容を確認することです。

この評価で、システム全体の連携が適切に行われ、設計通りに動作することを確認し、問題があれば早期に修正を行います。システムの信頼性と安定性の確保にもつながる工程です。

実機評価

要件定義で定めた要件に過不足がないことを確認する重要なステップです。このテストでは、実際の環境やそれに近い環境でテストを行うことで、ユーザーの要求が正確に反映されているかどうかを確認できます。特に、全てのECUを実機に搭載し、実際の使用環境で評価を行うことが重要です。これにより、要件定義で設定した全ての機能や性能が実現されていることを確認し、プロジェクトの完了を迎えることができます。

この工程は、システムがユーザーの期待に応えられるかどうかを判断するための最終チェックであり、品質保証の観点からも非常に重要です。

モデルベースの開発のメリット・デメリット

モデルベース開発のメリットのひとつは、開発プロセスにシミュレーションを導入することで実機試作回数を減らし、開発コストの削減や期間の短縮が可能になることです。また、モデルは視覚的で再利用しやすく、仕様書としても機能するため、開発効率が向上します。さらに、モデルを用いることで、設計段階で繰り返しシミュレーションを行い、品質向上につながることもメリットです。

一方、デメリットとしては、ツールの習熟に時間がかかるため、教育や人材育成が必要ということが挙げられます。また、開発体制が不均衡になりやすく、設計に多くの工数がかかるため、従来の人員配置では設計者が不足するかもしれません。長い目でみると効率化が図れますが、導入直後はモデルを扱う設計者を増やしたり、技術習得のフォローを行ったりといった体制の見直しが必要になる可能性があります。

MODEBE編集チームより
今後も増加が予想されるモデルベース開発

自動車業界だけでなく、検証のために広い場所を必要とする建設機械や航空機業界など頻繁な検証が難しい現場でもモデルベース開発が進んでいます。今後も実機を使わずに詳細なシミュレーションができるモデルベース開発のニーズがますます増加することが予想されています。

2021年には日産やトヨタなどの自動車メーカーや自動車部品メーカーによって2021年にMBD推進センター(JAMBE)が立ち上げられました。これは経済産業省による「自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会」でまとめられた「SURIAWASE2.0」を継承したものですが、現在ではMBDの全国普及を目指し、東芝デジタルソリューションズ株式会社、日本マイクロソフト株式会社など様々な企業が参画しています。

しかしながら、その専門知識を有するエンジニアはまだまだ不足しているのが現状です。
エンジニアとしての将来を検討する際には、若手エンジニアへのモデルベース開発技術の教育に力を入れているAZAPAエンジニアリング株式会社のような企業は、今後の活躍の場を広げるためにも、注目すべき企業だと言えるでしょう。

SUPERVISOR
監修者情報
JapanMBD推進センター

sponsored by AZAPAエンジニアリング株式会社

公式サイトキャプチャ
モデルベース開発の
利点や実装方法などを
産業界や研究機関に提供する

「一般社団法人MBD推進センター」とは、モデルベース開発は経済産業省の主導で進められてきた普及への取り組みの延長線上にある団体です。トヨタや日産、マツダなど多くの企業が参加し、MBD開発の共同研究がおこなわれています。

監修
MBD推進センター会員
市原 純一氏

自動車技術会のモデル流通検討委員の幹事を行いながら、制御開発、モデル開発を行う。MBD推進センターのガイドラインや、準拠モデルの開発にも携わる。

【所属・役職など】
・AZAPA株式会社 取締役
・ MBD推進センター 会員
・モデルベース大学 講師

【専門家監修】
モデルベース開発エンジニア
になる道筋を解説