Automotive SPICE(A-SPICE)とは
ISO/IEC 15504 および ISO 330xx シリーズに準拠した自動車規格がAutomotive SPICE(A-SPICE)です。この記事では、ソフトウェア開発プロセスを定量的に測定、アセスメントを見える化するために機能しているAutomotive SPICE(A-SPICE)の特徴や必要性について解説します。
Automotive SPICE(A-SPICE)とは
Automotive SPICE(A-SPICE)は、Software Process Improvement and Capability dEterminationの略称です。車載ソフトウェア開発プロセスのフレームワークを定めた業界標準のプロセスモデルです。欧州OEMメーカー主導で開発されたA-SPICEでは、ソフトウェア開発プロセスが詳細に定義されており、製品開発プロジェクトの品質改善につなげやすいのが特徴です。
マネジメント、エンジニアリング2つの観点について次の3つのカテゴリに分類されるプロセスが定義されているため、プロセス定義は全部で32個にもなります。
- ライフサイクルプロセス
- 支援ライフサイクルプロセス
- 組織ライフサイクルプロセス
自動車開発において、ソフトウェア開発はハードウェア開発と比較すると新しい分野となります。AーSPICE対応が欧州OEMとサプライヤ契約で増加するのに伴い、欧州OEMメーカーによる取引先へのプロセス監査も増加しています。国内や欧州OEMメーカーからサイバーセキュリティやソフトウェアアップデートが法規則されたことにより、A-SPICE対応要求が増えているのです。
AーSPICEを構成する座標としては、プロセス参照モデル (PRM) と測定フレームワークがあります。プロセス参照モデルである第1次元から特定のプロセスを選択し、第2次元であるその能力レベルがエビデンスに基づいて決定される仕組みであり、プロセスとその属性を評価・能力レベルを判定することができます。
AーSPICEには不完全プロセスである「レベル0」から革新的なプロセスである「レベル5」までの6段階で定義されています。自動車業界で普及が進んでおり、多くのOEMでは少なくともレベル2を満たし、且つ将来的にレベル3を満たすことが求められており、企業によってはそのレベルに達しなければ取引しないケースもあります。
モデルベース開発でA-SPICEに準拠する必要性
車載ソフトウェア開発においてMBDが普及していますが、快適性や環境性、安全性などから、より高い機能・性能が求められるようになっています。車載ソフトウェア市場が拡大する一方、ソフトウェア由来のリコールも増えており、厳しい品質基準が求められるようになってきました。
A-SPICEは細かいプロセス定義が可能であり、実施すべきプロセスや作るべき成果物は具体的です。達成状況が分かりやすく品質改善につなげやすいメリットがあるため、自動車に搭載されるソフトウェアの品質を統一して確保すべく作成されたものです。
第三者との共通指標として適用することにより、品質要求の認識乖離を抑えることもできます。
A-SPICEとISO26262の違い
A-SPICEがISO26262と異なる点は、A-SPICEは公的認証制度ではないという点でしょう。しかし、A-SPICEは世界基準として業界で幅広く普及しており、信頼性は確保されていると考えられます。
ISO26262は自動車産業における機能安全規格です。コンセプト、開発、生産、運用、サービス、廃棄段階にわたる、自動車部品の完全な安全ライフサイクルが対象となり、安全解析活動を、システム、ハードウェア、ソフトウェアの各レベルで実施することにより指定されるものです。
A-SPICEは設計と開発を重視しており、一貫性や正確性、安全性を確保する双方向トレーサビリティの重要性についても指定しています。
一方、A-SPICEとISO26262は重複している点も多く、A-SPICEに従った開発を行っていれば ISO 26262 の複数の条件を満たしていると考えられます。
自動車業界だけでなく、検証のために広い場所を必要とする建設機械や航空機業界など頻繁な検証が難しい現場でもモデルベース開発が進んでいます。今後も実機を使わずに詳細なシミュレーションができるモデルベース開発のニーズがますます増加することが予想されています。
2021年には日産やトヨタなどの自動車メーカーや自動車部品メーカーによって2021年にMBD推進センター(JAMBE)が立ち上げられました。これは経済産業省による「自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会」でまとめられた「SURIAWASE2.0」を継承したものですが、現在ではMBDの全国普及を目指し、東芝デジタルソリューションズ株式会社、日本マイクロソフト株式会社など様々な企業が参画しています。
しかしながら、その専門知識を有するエンジニアはまだまだ不足しているのが現状です。
エンジニアとしての将来を検討する際には、若手エンジニアへのモデルベース開発技術の教育に力を入れているAZAPAエンジニアリング株式会社のような企業は、今後の活躍の場を広げるためにも、注目すべき企業だと言えるでしょう。