企業がMBDへ取り組む上での現状課題
企業がMBD導入にあたって直面する課題
制御や制御対象をモデル化しシミュレーションや検証を繰り返して効率的に設計・開発を行うモデルベース開発(MBD)は、多くのメリットがありますが、企業がMBDを導入する際には、いくつかの課題が存在します。企業のMBD導入時に直面する課題について解説します。
上流工程の工数が増える
モデルベース開発では上流工程でシステムを構築する制御などについてモデルを作成する必要があります。これには詳細なモデルの構築やモデルの検証が含まれます。
従来の開発では下流工程での検証に時間がかかっていましたが、MBDでは上流工程での検証が多くなるため、新しいツールやプロセスの学習にエンジニアや開発者が時間を費やす必要があり、その結果、上流工程の工数が増えることがあります。
技術的な課題
MBDを導入するためには、新しいモデリングツールやソフトウェア、ハードウェアが必要となります。これには技術的トレーニングと技術者スキルの向上が不可欠であるため、エンジニアや開発者はモデル作成やシミュレーションを実行するためのツールの利用方法を学ばなければなりません。
また、MBDはこれまでの設計方法とは異なるアプローチを取るため既存プロセスとの統合も技術的な課題となります。
組織的な課題
モデルベース開発は協力とコミュニケーションが重視されるアプローチであるため、異なる部門やチーム間での協力が不可欠となります。組織の文化やプロセスが従来方法に依存している場合には、それらの変革も必要となります。
そのためプロジェクトマネージャー、エンジニア、デザイナーなど異なる役割の人間が協力してモデルベース開発を成功できるように、組織を変革する必要があります。
十分なリソースの確保や変更管理が必要
モデルベース開発ではモデルの品質と正確性が非常に重要です。不適切なモデルやシミュレーションが行われると、設計エラーや問題の発見が遅れてプロジェクトの遅延や品質問題が発生する可能性があります。
モデルの適切な検証と検証が必要であり、十分なテストリソースを確保することも不可欠です。また、モデルの更新や変更管理も課題となるので、変更管理プロセスの整備が必要となります。
予算と資源の確保が必要
モデルベース開発の導入には新しいツール、トレーニング、ハードウェアが必要となります。特に中小企業では、予算の確保と資源の適切な割り当てが課題となるため、MBDの導入プロセスをスムーズに進められるような予算を確保し、投資利益率(ROI;Return On Investment)の見込みも検討しながら適切にリソースを配分する必要があります。
法的規制と規制要件
自動車産業などの一部の分野では法的規制や規制要件に従う必要があります。例えば、安全規制が厳格な自動車産業では、モデルベース開発を導入する際にこれらの要件に合致していなければなりません。
企業ではMBD導入前に法的規制と規制要件を遵守するための対応策について検討し、MBDの実施を制約する可能性のある要件をなくしておく必要があります。
企業がこれらのMBD導入における課題を克服するためには、戦略的なアプローチが必要となります。企業や組織は技術的なトレーニングと教育を提供し、組織や文化変革をサポートできるようなリーダーも育成しなければなりません。
さらに、適切なツールやリソースの選定、モデルの信頼性と正確性の確保、バージョン管理プロセスの整備、予算と資源の適切な確保など、各課題に対する具体的な計画を策定することも重要です。
しかしながら、MBDの専門知識を有するエンジニアはまだまだ不足しているのが現状です。
エンジニアとしての将来を検討する際には、若手エンジニアへのモデルベース開発技術の教育に力を入れているAZAPAエンジニアリング株式会社のような企業は、今後の活躍の場を広げるためにも、注目すべき企業だと言えるでしょう。