モデルベース開発におけるHILSとは

HILSはモデルベース開発で活用されているシミュレータで、自動車のシステム開発で取り入れられています。EVや自動制御などの進化が求められる自動車産業にとって重要な役割を担う存在です。この記事では、モデルベース開発におけるHILSについて、その特徴やメリットなどを解説します。

モデルベース開発におけるHILSとは

HILSとは、Hardware-In-the-Loop-Simulation（ハードウェアインザループシステム）の略称で、実機を模した開発用シミュレータのことを指します。自動車の車両開発においては、車のエンジン機能や車両挙動を数値化してシミュレーションを行います。

エンジンやトランスミッション、車間距離制御システムなどは、ECUが管理しています。つまりHILSはECUのテスト装置で、ECUの制御対象となる機械装置をコンピュータのバーチャルな世界に創り上げてテストを行います。

ECUと制御機構をつなぐサイクルのことを「制御ループ」といいますが、HILSは実システムと同様に制御ループを実現します。ECUが必要となる環境を作り出し、テストを可能にする装置がHILSです。

HILSによるシミュレーション方法

ECUは、センサーなどで制御対象の状態を入力し、制御ロジックに基づいて出力値を計算して制御対象に出力するというプログラムを実行するコンピュータ装置です。HISLはECUと連携して作動します。

制御対象となる実世界の電気・機械装置の代わりとなるバーチャルな制御対象の動作状態を、シミュレーションと呼ぶプログラムを使って計算します。この計算時間が実時間と同じになるように、コンピュータをリアルタイムで作動させることができれば、ECUを実世界の制御ループと同じように作動させることが可能です。

テスト仕様を構築してシミュレーション環境であるHILSを構築し、実際のECUとHILSを接続。変化するエンジン回転数を計算して、回転センサー信号をインターフェース回路に発生させます。段階を経て制御ループを構築することでシミュレーションが可能です。

MILS・SILSとの違い

ECUなどのハードウェアを用いずにソフトウェアだけで閉ループ（クローズドループ）を構成したものがSILSです。制御プログラムのソースコードをコンパイルして実行するシミュレータをSILSと呼び、Simulinkなど、モデルエディタ上でシミュレーションするものをMILSと呼びます。

HILSはECUの実機を制御するためのテスト装置ですが、MILSはバーチャルでのシステム設計、SILSは制御モデル・ロジック検証と、それぞれ役割が異なります。また、HILSとMILSは開発工程序盤、SILSは開発工程中盤と、活用されるフェーズが異なっています。

HILSを活用するメリット

HILSは、ECUの練習台と言えます。練習台でいろいろな想定で経験を積んでおけば、初めての本番でも、熟練者のような技量を発揮できます。練習台は練習台として作成されているので、失敗したときのロスを抑えることが可能です。

HILSを活用することでECUのソフトウェア検証ができ、開発期間の短縮が可能です。HILSがなければ、検証に実機を使わなければいけません。もし不具合があれば前段階からのやり直しになってしまい、時間はもちろん、コストのロスも発生します。開発期間の短縮とコスト削減は、HILSの大きなメリットと言えるでしょう。

さらに、HILSは実機を必要としない開発環境というだけでなく、24時間自動運転でテストできる優れものです。動作に不具合が発生した場合も、その前提条件を把握して、再現テストを簡単に実行することができます。

HILSと自動車開発

HILSは、実機を模した開発用シミュレータです。エンジンやトランスミッションなどを管理するECUと連携し、ECUのテストが実施できます。バーチャルな制御対象を構築し、実際のECUとHILSを接続することで、ECUのソフトウェア検証が可能です。

シミュレータを活用すれば、不具合があった場合でも前段階の修正は簡単です。開発期間の短縮ができるだけでなく、コストも削減できるというメリットがあります。

制御システムの向上やEVの実用化など、自動車の技術は急速に進化している今、HILSは自動車製品の設計・開発に欠かせない存在です。そしてHILS自身も、高速処理の実現などを追求して進化しています。自動車開発の重要な技術として、今後もHILSは活用されていくことが予想されます。