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モデルベース開発(MBD)におけるAIについて

MBDの定義と開発プロセス

モデルベース開発(MBD)は、制御対象やシステムの仕様をブロック図や数理モデルで表現し、仮想環境上で「動く仕様書」として設計と検証を反復的に行う手法です。モデルを用いたシミュレーションにより、初期段階で性能評価や設計変更を完了させることで、ハードウェア試作数を削減し、開発期間の大幅短縮を実現します。

さらに、主要な開発ツールであるMATLAB/SimulinkやModelicaでは、モデルから自動的にC/C++コードを生成し、組み込みシステムへ直接デプロイできる機能が提供されているため、モデル検証から量産コード生成までを一貫して行うことが可能です。

AI技術の概要とMBDへの適用領域

近年、モデルベース開発にディープラーニングや強化学習といったAI技術を組み合わせる動きが加速しています。たとえば、自動運転システムではカメラやLiDARなどのセンサー情報をディープラーニングで認識し、その結果をもとに制御モデルを自動生成・最適化する試みが進んでいます。

このようなAI統合型MBDは、従来の数式ベース設計からデータ駆動型設計へとシフトし、複雑化する制御システムに柔軟かつ高精度に対応できる点が大きな特徴です。

AI統合型MBDのメリット

開発効率化とコスト削減

AI統合型MBDでは、仮想環境で多数のシナリオを一括シミュレーションしながら最適パラメータを探索できるため、従来のハードウェア試作による反復テストに比べて大幅な工数削減が可能です。特に開発初期段階で仕様検証を完了できることで、後工程の手戻りを減らし、開発全体のコストを抑制できます。

また、AIによる自動設計支援は試行錯誤の効率を飛躍的に高め、エンジニアの作業負荷を軽減します。

シミュレーションの高度化

AIモデルを組み込むことで、従来の線形モデルでは難しかった非線形現象や複雑な相互作用を高精度に再現できるようになりました。たとえば、強化学習を活用して実機では模擬困難な極限条件下での制御性能を検証したり、人間が設計しづらい非直感的な制御ロジックを自動生成したりすることが可能です。これにより、シミュレーションを用いた妥当性確認や故障モードの検証範囲が大きく広がり、製品信頼性の向上につながります。

再利用性と品質保証の向上

モデルベース開発では、コンポーネント化されたモデルをライブラリ化し、複数のプロジェクトで再利用できる点がメリットです。AIモジュールも同様に学習済みモデルとして蓄積・検証し、品質が担保された状態で再利用することで、新規開発における品質保証のコストを削減できます。さらに、Simulink Verification and Validation™やPolyspaceといった検証ツールを組み合わせることで、モデル検証結果をコード検証へとシームレスに引き継ぎ、安全性や規格対応のトレーサビリティを確保できます。

産業別の事例・ユースケースとは?

自動車ECU開発(オーバーステア検出)

自動車の旋回挙動においてリアタイヤのグリップ喪失を検知するオーバーステア判定ユニットでは、走行データを用いた機械学習モデルをSimulinkで開発し、組み込みECUに搭載する例があります。これにより、公道テスト前のシミュレーション段階で危険挙動を高精度に検出できるようになった事例もあります。

石油・ガス設備の予知保全システム

米国の油田サービス企業では、複数のポンプ機器から収集した大量データを分析し、ニューラルネットワークを用いて故障予測モデルを構築。これをモデルベース開発で統合し、予知保全スケジュールに反映させることでダウンタイム削減に成功しています。

AI活用型MBDの課題と対策とは?

組み込みコード生成の制約と対応策

AIモデルを含むSimulinkモデルから生成されるコードは、データ型の自動変換や演算精度の違いに起因するオーバーフロー問題などが生じる場合があります。こうした課題には、モデル生成後にEmbedded Coderの最適化オプションを活用したり、量子化・枝刈りによるモデル圧縮を事前に行ったりすることで、組み込み環境への適合性を高める対策が有効です。

シミュレーション環境へのAIモデル統合課題

AIモデルは一般にGPUによるバッチ処理を前提として開発されるため、リアルタイム性が求められるHIL(Hardware-in-the-Loop)環境へ直接組み込むと、計算負荷が高く制御周期を維持できないケースがあります。そのため、AIモデルをシミュレーション用に軽量化したり、サロゲートモデルを用いて推論部分のみを簡易化したりする技術が必要です。

データ品質管理と学習プロセス構築

AI統合型MBDでは、大量の実機データや仮想シナリオデータを活用しますが、データのラベル付けや前処理、バージョン管理が不十分だとモデル性能や再現性に大きな影響を与えます。石油・ガス設備の予知保全システムでは、1テラバイトものデータを分析し機械学習アルゴリズムに適用する例があり、高品質なデータパイプラインとガバナンス体制の構築が成功の鍵となっています。

まとめ

モデルベース開発エンジニアは、単に設計図を描くエンジニアではありません。仮想環境上でシステムの挙動を詳細にシミュレーションし、実機試作に先立って最適な仕様を導き出すことで、開発の質とスピードを大きく変える存在です。

特に近年はAI技術の活用により、制御モデルや予測モデルの高度化が進み、従来の手法では不可能だった複雑な設計課題にも挑めるようになっています。こうした領域では、数学的知識やプログラミングスキルだけでなく、物理現象や産業特有の知見も求められるため、幅広い分野を横断する成長機会があります。

また、モデルベース開発は自動車や航空機、エネルギー産業など多岐にわたる分野で採用されており、国際的な規格や安全基準への対応も必要です。そのため、国内外のプロジェクトに携わる機会が多く、グローバルな視点を養いながらスキルを磨くことができます。さらに、開発初期から最終製品まで一貫して関わるため、自分の設計が製品の性能や安全性に直結する達成感を得られる職種でもあります。

もし、モデルベース開発エンジニアというキャリアに興味を持たれた方は、ぜひ専門情報を集め、必要なスキルやキャリアパスについて理解を深めてみてください。当サイトでは、初心者から経験者まで役立つ情報を提供し、業界動向や実務のリアルな声も紹介しています。

MODEBE編集チームより
今後も増加が予想されるモデルベース開発

自動車業界だけでなく、検証のために広い場所を必要とする建設機械や航空機業界など頻繁な検証が難しい現場でもモデルベース開発が進んでいます。今後も実機を使わずに詳細なシミュレーションができるモデルベース開発のニーズがますます増加することが予想されています。

2021年には日産やトヨタなどの自動車メーカーや自動車部品メーカーによって2021年にMBD推進センター(JAMBE)が立ち上げられました。これは経済産業省による「自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会」でまとめられた「SURIAWASE2.0」を継承したものですが、現在ではMBDの全国普及を目指し、東芝デジタルソリューションズ株式会社、日本マイクロソフト株式会社など様々な企業が参画しています。

しかしながら、その専門知識を有するエンジニアはまだまだ不足しているのが現状です。
エンジニアとしての将来を検討する際には、若手エンジニアへのモデルベース開発技術の教育に力を入れているAZAPAエンジニアリング株式会社のような企業は、今後の活躍の場を広げるためにも、注目すべき企業だと言えるでしょう。

SUPERVISOR
監修者情報
JapanMBD推進センター

sponsored by AZAPAエンジニアリング株式会社

公式サイトキャプチャ
モデルベース開発の
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「一般社団法人MBD推進センター」とは、モデルベース開発は経済産業省の主導で進められてきた普及への取り組みの延長線上にある団体です。トヨタや日産、マツダなど多くの企業が参加し、MBD開発の共同研究がおこなわれています。

監修
MBD推進センター会員
市原 純一氏

自動車技術会のモデル流通検討委員の幹事を行いながら、制御開発、モデル開発を行う。MBD推進センターのガイドラインや、準拠モデルの開発にも携わる。

【所属・役職など】
・AZAPA株式会社 取締役
・ MBD推進センター 会員
・モデルベース大学 講師

【専門家監修】
モデルベース開発エンジニア
になる道筋を解説